DSP搭載オーディオインターフェイスは必要?できることと選び方

DSP搭載オーディオインターフェイスは必要?できることと選び方

DSP搭載オーディオインターフェイスが役立つのは、歌や楽器を録音するとき、エフェクトのかかった音を小さな遅延で聴きたい場面です。一方、主にDAW内でミックスを行うなら、パソコンのCPUで動くネイティブ・プラグインを中心に組む選択肢もあります。

まずは「録音中に聴く音を整えたいのか」「録音後の音作りを充実させたいのか」を分けて考えてみましょう。

ただし、DSP搭載という表示だけでは、使えるエフェクトや録音への反映方法までは分かりません。ここでは仕組みを整理したうえで、SteinbergのUR22CとUniversal AudioのApollo Twin X | Gen 2を例に、自宅での使い方に合う条件を見ていきます。

この記事のポイント
  • 録音中のエフェクト付きモニターに役立つDSP
  • モニター用の効果とかけ録りの違い
  • ネイティブ版とDSP版の動作先・対応条件
  • 用途と処理制限から考える製品選び
目次

DSP搭載オーディオインターフェイスでできること

DSPとは音の処理を担当する専用プロセッサー

DSPとは音の処理を担当する専用プロセッサー

DSPはDigital Signal Processorの略で、デジタル信号の処理を得意とするプロセッサーです。オーディオインターフェイスでは、エフェクトやミキサーの処理を担当します。「音の処理を本体側で受け持つ仕組み」と考えると、役割をつかみやすいでしょう。

操作画面がパソコンに表示されても、そこで音の計算をしているとは限りません。UR22CのdspMixFx UR-Cは、本体に搭載されたDSPミキサーやDSPエフェクトを操作するソフトウェアです。入力音を本体側でミックスし、その入力にDSPエフェクトをかけてモニターできます。

また、DSPを何に使うかは製品によって異なります。UR22Cでは内蔵エフェクトとモニターミックスが判断の中心。Apolloでは、対応するUADプラグインを専用チップで動かし、UAD Consoleを通して録音中の音を聴く使い方ができます。

購入時には、DSPの有無に加えて「本体で動く処理の中身」を見る必要があります。

遅延とCPU負荷のメリットは、音を通す経路で変わる

録音時のレイテンシーとは、入力した音が聴こえるまでの遅延のことです。Apolloでは、入力をUAD Consoleへ通し、DSPプラグインで処理した音を低レイテンシーでモニターできます。歌いながらエフェクトのかかった自分の声を聴く、といった用途に結び付く機能です。

ここで区別したいのが、Consoleで使う場合と、DAW内でUADプラグインを使う場合です。国内代理店のサポートによると、DAW内ではDSPによる処理を利用していても、DAWの入出力バッファリングによる入力遅延の影響を受けます。

バッファサイズが大きいほど、その遅延も大きくなります。DSPを使えば、どの経路でも遅延がなくなるわけではありません。

CPU負荷についても、軽くなる範囲を分けて考えましょう。UADのDSPプラグインは専用チップで動くため、その処理をパソコンのCPUに頼らずに行えます。その分、CPUの処理能力をDAWやほかの作業へ使えるのが利点です。ただし、ネイティブ・プラグインは引き続きCPU上で動きます。

DSP搭載機を接続するだけで、DAW内の処理がすべて本体へ移る、という意味ではありません。

モニターだけにかける効果とかけ録りを分ける

モニターだけにかける効果とかけ録りを分ける

DSPエフェクトを使うときは、「自分が聴く音」と「DAWへ録音する音」を分けて考えるのが大切です。モニターだけへ効果をかける設定なら、エフェクトのある音を聴きながら、録音側にはその効果をかけない信号を送れます。対して、効果を含む信号を録音するのが、かけ録りです。

UR22CのFX REC設定モニターする音DAWへ送る録音信号
オフ入力チャンネルのエフェクトありそのエフェクトなし
オン入力チャンネルのエフェクトありそのエフェクトあり

※UR22Cオペレーションマニュアルに記載された、入力チャンネルの挿入エフェクトの動作です。

録音側に効果を残すか迷うなら、まず「聴くためだけに使いたい効果か」を決めましょう。たとえば、入力チャンネルの音作りをモニターだけに使いたい場合はFX RECをオフに、同じ処理を録音信号にも含めたい場合はオンにする、という違いです。エフェクトのオン・オフと、録音へ含めるかどうかは別の設定になります。

なお、この切り替えをすべての内蔵エフェクトへ当てはめることはできません。UR22Cの同マニュアルでは、リバーブのREV-Xはモニター信号だけにかけられると説明されています。入力チャンネルの挿入エフェクトとREV-Xでは、信号の通り道が違います。

「ヘッドフォンで聴こえる効果が、そのまま全部録音される」と考えないことがポイントです。

手持ちのプラグインはDSP対応版かを確認する

「好きなプラグインをDSPに任せたい」ときは、そのプラグインが何の上で動く製品なのかを確かめます。UADを例にすると、ネイティブ版はパソコンのCPU上で動き、ApolloなどのUADハードウェアは不要です。一方、DSP版はApolloやUAD-2ハードウェアの専用チップで動作します。

同じUADという名前でも、動作先を区別する必要があります。

ライセンスの条件も確認しましょう。国内代理店のFAQでは、ネイティブ版とApollo/UAD-2版の両方をサポートするUADプラグインの購入には、両方のライセンスが含まれると案内されています。ただし、DSP専用のものは引き続き対応ハードウェアが必要です。

この説明を「すべてのUADプラグインに必ず両形式がある」と読み替えることはできません。

DSP版を選ぶ理由は、音の違いだけではありません。同FAQはUADのネイティブ版とDSP版の音について、同じように聴こえると回答しています。一方、Apollo固有のUnisonは、対応プラグインに応じて物理的な入力インピーダンスやゲイン段の特性を変える機能です。

プラグイン単体の音と、録音用ハードウェアとの連携は分けて比べましょう。

DSP搭載オーディオインターフェイスの必要性と選び方

歌・楽器の録音、配信、DAW内の制作で優先順位を決める

歌や生演奏の楽器を頻繁に録るなら、DSPを重視する理由は明確です。録音中に、対応エフェクトを通した音を低レイテンシーで聴けるからです。特に、録る段階から特定のプリアンプやアンプの音を取り入れたい場合は、ApolloのDSPプラグインやUnisonのような仕組みが候補になります。

打ち込み中心で、生演奏の入力を聴きながら録る機会が少ないなら、録音用DSPの優先度は下げて考えられます。DAW内のミックスや複数のパソコンでの作業を重視する場合、UADの案内でもネイティブ版の柔軟性が挙げられています。

使いたいプラグインにネイティブ版があり、その使い方で目的を満たせるなら、DSP搭載を購入の必須条件にする必要はありません。

配信を主目的にする場合は、エフェクトの種類に加えて、配信へ送る音をどうまとめられるかが重要です。たとえばヤマハのURX-Cシリーズ向け案内では、dspMixFxに通常のモニターミキサーとは別の配信用ミキサーと、専用エフェクトスロットが用意されています。

Duckerは、声などの入力に応じて別の音声の音量を下げる効果で、話す間だけBGMを下げる用途が示されています。

このため、配信なら「声とBGMをどう扱いたいか」、録音なら「演奏中にどの音を聴きたいか」から機能を選ぶのがおすすめです。録音時はDSP、ミックス時はネイティブという併用もできます。制作全体をどちらか一方へ統一する必要はありません。

UR22Cは内蔵エフェクトを使ったモニターを軸に検討する

UR22Cは内蔵エフェクトを使ったモニターを軸に検討する

SteinbergのUR22Cは、2入力・2出力のUSBオーディオインターフェイスです。カスタムDSPチップ「SSP3」を搭載し、dspMixFxによるモニタリングを利用できます。

マイク入力は2系統で、前面のMIC/LINE 2はエレキギターやベースを接続するためのHI-Z切り替えにも対応しています。

この機種を検討するなら、DSPの使い道を具体的にイメージしてみましょう。オペレーションマニュアルには、Channel Strip、Guitar Amp Classics、REV-Xを使う構成が説明されています。

入力チャンネルの効果をモニターだけに使うか、録音にも含めるかを選べるので、録音する信号と聴く信号を分けたい用途に合います。

一方、内蔵エフェクトには使用条件があります。同マニュアルではChannel Stripは2つ、Guitar Amp Classicsは1つとされ、Channel Stripを2つとも同じチャンネルで使うことはできません。

また、Guitar Amp Classicsはステレオチャンネル、および176.4kHz/192kHzでは使用できないと記載されています。最大192kHz対応という本体仕様と、各エフェクトを使える条件は別です。

UR22Cは、内蔵の処理で目的を満たせるかを見ながら選ぶ候補です。ここで挙げた動作・制限はUR22Cオペレーションマニュアルの記載に基づきます。使用するソフトウェアの版に対応した案内と併せて判断し、名称の似たURX-Cシリーズの説明をUR22Cの仕様として扱わないようにしましょう。

Apollo Twin X Gen 2はUADの録音処理とDSP容量で選ぶ

Universal AudioのApollo Twin X | Gen 2は、DUOまたはQUADコアDSPを備えたThunderboltオーディオインターフェイスです。2つのUnisonマイクプリアンプとHi-Z入力、ADATまたはS/PDIFに対応する光入力を搭載。

対応UADプラグインを介したリアルタイム録音を重視する人の候補になります。

Universal Audio Apollo Twin X | Gen 2 を探す

予算を考えるときは、本体だけでなく使いたいプラグインも含めます。国内代理店の製品案内では、付属以外のUADプラグインには別途購入が必要と明記されています。ライブラリに目的の製品があることと、購入する本体にそのライセンスが付属することは別です。セット名と付属内容を対応させて比べましょう。

DUOとQUADを検討する際は、同時に使いたい処理を具体化します。

UAD Consoleでは、1つの入力チャンネルに並べるプラグインを1つのDSPコア内に収める必要があり、チャンネルDSPペアリングを有効にすると2コアを利用できます。

本体全体のコア数だけで、1チャンネルへ好きなだけ処理を重ねられると判断することはできません。

さらに、内部ミキシングや音声の振り分けもDSPを使い、プラグインによってはサンプルレートによりDSP使用量が変わります。

導入後に負荷を確かめるなら、全コアの平均を示すメーターだけでなく、UAD Meter & Control PanelのSystem Informationで各コアの負荷を見る方法があります。録音用のDSPとパソコン側のネイティブ処理を組み合わせることも、製品が想定する使い方です。

最後はエフェクト、接続、同時使用条件を照合する

最後はエフェクト、接続、同時使用条件を照合する

2機種の違いは、DSPの有無だけでは表せません。下表は音質の順位ではなく、DSPを使って何をしたいかを考えるための比較です。UR22Cは内蔵処理の内容、Apollo Twin X | Gen 2は対応UADプラグインとDSP構成が主な検討点になります。

選ぶ観点Steinberg UR22CUniversal Audio Apollo Twin X Gen 2
DSPの主な使い道内蔵エフェクトとモニターミックス対応UADプラグインによるリアルタイム録音など
録音前の音作りChannel Strip、Guitar Amp ClassicsなどUADプラグイン、Unison対応処理
コンピューターとの接続USB 3.0、USB 2.0にも対応Thunderbolt
処理量で見る点内蔵エフェクトの個数・組み合わせ・サンプリング周波数の制限DUO/QUAD構成と、入力チャンネル単位のDSP制限
費用で見る点必要な処理を内蔵エフェクトで満たせるか目的のUADプラグインが付属するか、別途購入か

※UR22Cのエフェクト条件はオペレーションマニュアルの記載によります。

購入前には、パソコンとの接続規格、対応OS・ドライバー、必要なケーブルを、選ぶ型番の動作条件に照らして確認します。

接続条件の具体例として、UR22Cのマニュアルでは、USB 2.0 Type-Aへ接続する場合は付属USBケーブルに加え、市販のUSB電源アダプターまたはUSBモバイルバッテリーが必要とされています。USB 3.1 Type-Cへ接続する場合は、別途Type-C同士の対応ケーブルが必要です。

私は、候補を絞るときには「録音中に使いたい効果」「その効果を録音へ残すか」「同時に必要な処理」の3点を書き出すことをおすすめします。内蔵エフェクトで足りるならその内容を重視し、特定のUADプラグインやUnisonが目的なら対応するApolloを検討する。

DAW内のミックスが中心なら、ネイティブ版で目的を満たせるかから考える。この順序なら、DSP搭載という言葉を、自分に必要な機能へ置き換えて選べます。

DSP搭載オーディオインターフェイスの選び方まとめ

この記事のまとめです。

  • DSPは、エフェクトやミキサーなどのデジタル信号処理を担当するプロセッサーです。
  • 歌や楽器の録音中に、対応エフェクトを通した音を低レイテンシーで聴きたい場合に役立ちます。
  • ApolloのDSPプラグインも、DAW内で使う場合は入出力バッファリングによる遅延の影響を受けます。
  • DSPが受け持つ処理と、CPUで動くネイティブ・プラグインの処理は別です。
  • モニターだけに効果をかける設定と、録音信号にも効果を含めるかけ録りを区別しましょう。
  • UADはプラグインごとに対応形式を確認し、DSP専用品には対応ハードウェアが必要です。
  • DAW内のミックスを重視する場合は、ネイティブ版を中心にする選択肢もあります。
  • 配信では、エフェクトに加えて配信へ送る音声をどうミックスできるかを見ます。
  • UR22Cは内蔵エフェクトの内容と使用制限を確認。マニュアル上、Guitar Amp Classicsは176.4kHz/192kHzで使えません。
  • Apollo Twin X Gen 2は、必要なUADプラグインの付属状況と入力チャンネル単位のDSP容量も判断材料です。
  • 接続規格や給電条件まで照合し、録音中に使う効果と同時処理の条件から選びましょう。
参考にした情報
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この記事を書いた人

音の道具が好きで、買い物には少し慎重。マイクやイヤホン選びを、予算・接続・置き場所から一緒に考えます。家で聴く・録る時間を心地よくするヒントをお届けします。

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