オーディオインターフェイスのMIDI端子は、鍵盤や音源と「演奏情報」をやり取りするための端子です。
パソコンへUSB MIDIで直接つなげる鍵盤なら、その接続のために5ピンMIDI端子付きのオーディオインターフェイスを選ぶ必要はありません。一方、5ピンMIDIで接続する楽器には、MIDI端子付きの機種や、別体のUSB MIDIインターフェイスが候補になります。
もう一つ分けて考えたいのが、「弾いた情報を残したい」のか、「楽器本体の音を録りたい」のかです。MIDI接続だけでは、外部シンセの音声を取り込んだことにはなりません。ここでは接続先をパソコンに絞り、手持ちの端子と録音したいものから、必要な機材を見ていきましょう。
- MIDIの演奏情報とオーディオの音声の違い
- USB接続と5ピンMIDIで変わる必要機材
- 外部シンセの録音に必要な音声経路
- MIDI追加・一体型の選び方と無音時の確認
オーディオインターフェイスのMIDI端子は何に使う?
MIDIは演奏情報、オーディオは音声を扱う

MIDI(ミディ)は、電子楽器などが演奏情報をやり取りするための通信規格です。送るのは音そのものではなく、音の高さや長さ、弾く強さなどの情報。受け取った音源が、その情報に応じて音を鳴らします。音色の切り替えや音量などを制御する情報も扱えます。
| 比べる点 | MIDI | オーディオ |
|---|---|---|
| 記録するもの | 音符などの演奏情報 | 演奏によって鳴った音声 |
| 音を聴くための要素 | MIDI情報を受けて鳴る音源 | 録音した音声の再生経路 |
| 制作での使い方 | 演奏情報を編集し、音源を鳴らす | 楽器や声の音を録音・編集する |
| 外部シンセとの関係 | 発音や音色切り替えなどを指示する | シンセから出た音声を取り込む |
たとえば鍵盤演奏をMIDIで記録すれば、あとから演奏情報を編集し、別の音色で鳴らす使い方ができます。オーディオ録音は、そのとき実際に鳴った音を残す方法です。どちらが優れているかではなく、残したいものが違います。演奏をMIDIで整えてから、音源を鳴らした結果をオーディオとして録音する使い方もあります。
MIDI端子付きでも、音声入力とMIDI入力は別の役割
オーディオインターフェイスは、マイクや楽器などから入ったアナログ音声をデジタル信号に変え、パソコンへ送る役割を持ちます。パソコンからの音をヘッドホンやスピーカーで聴く経路にもなります。MIDI端子付きの機種は、それに加えてMIDI情報を入出力する端子を備えています。
同じ本体に並んでいても、MIDI INは演奏情報の入口、LINE入力は音声の入口です。たとえばTASCAM US-2x2HRには、マイク/ライン入力とは別にMIDI IN・OUTがあります。MIDIケーブルを挿したからといって、その楽器の音がライン入力へ入るわけではありません。
また、MIDIで音を鳴らすには音源が必要です。パソコン上のソフトウェア音源を使うのか、外部のハードウェア音源を使うのかで、音声が出てくる場所が変わります。「MIDIの送り先」と「音声を聴く経路」を分けて追うと、端子の役割がつかめます。
USB MIDIで直接つながる鍵盤には5ピン端子は必須ではない

USB MIDIに対応し、使用するパソコンで動作する鍵盤なら、鍵盤をパソコンへ直接接続できます。具体例としてRoland A-49の公式FAQでは、USB接続したうえで、ソフトウェア音源や音楽制作ソフトのMIDI入力デバイスにA-49を選ぶ方法を案内しています。
この経路に、オーディオインターフェイスの5ピンMIDI端子は登場しません。
そのため、USB鍵盤でパソコン内の音源を弾く場合は、鍵盤のMIDI接続とオーディオインターフェイスの音声出力を別々に考えて構いません。鍵盤はパソコンへ演奏情報を送り、パソコンで生成された音はオーディオインターフェイスにつないだヘッドホンなどで聴く、という構成です。
ただし、USB端子があるだけで、音声まで送れるとは判断できません。ヤマハの接続ガイドでも、USB経由で扱えるデータは楽器によって異なり、直接オーディオ録音できるモデルは限られるとしています。
端子の形だけでなく、手持ちの機種の仕様に「USB MIDI」「USBオーディオ」のどちらが記載されているかを見ます。
MIDI端子が必要かは、手持ちの楽器と目的で決める
購入前は「MIDI対応」という言葉だけで候補を絞るより、何をパソコンへ送りたいかを先に決めるのがおすすめです。USB端子のないMIDIキーボードを使う場合と、シンセの内蔵音色を録音する場合では、必要な入口が異なります。
| やりたいこと・手持ちの機材 | 検討する接続 | 選ぶときの要点 |
|---|---|---|
| USB MIDI鍵盤でパソコン内の音源を弾く | 鍵盤からパソコンへUSB接続 | 5ピンMIDI端子は、この入力経路には不要 |
| USB端子のない5ピンMIDI鍵盤を使う | MIDI端子付き機種、または別体のUSB MIDIインターフェイス | 楽器のMIDI OUTを受ける入力が必要 |
| パソコンから外部MIDI音源を鳴らす | インターフェイスのMIDI OUTから音源へ | MIDIの送り先に加え、音源の音声出力経路も用意 |
| 外部シンセの音をアナログ接続で録る | シンセの音声出力からライン入力へ | MIDI端子の有無だけでなく、音声入力を確認 |
| USBオーディオ対応楽器の音を録る | 対応機種ならUSBで直接録音 | 機種ごとのUSBオーディオ対応条件を確認 |
すでに音声用のオーディオインターフェイスを持っていて、足りないのが5ピンMIDIの接続だけなら、別体のMIDIインターフェイスを追加する方法があります。これから音声入力もそろえるなら、MIDI端子を備えたオーディオインターフェイスを候補にする、という順番で考えると無理がありません。
オーディオインターフェイスとMIDIの接続・選び方
5ピンMIDIは送り側のOUTから受け側のINへつなぐ
MIDI INは受信、MIDI OUTは送信です。鍵盤の演奏をパソコンへ取り込むなら、鍵盤のMIDI OUTからインターフェイスのMIDI INへ接続します。反対に、パソコンの演奏情報で外部音源を鳴らすなら、インターフェイスのMIDI OUTから外部音源のMIDI INへ。
IN同士、OUT同士をつなぐのではなく、情報の進む方向で考えます。
- 鍵盤から演奏情報を入力:鍵盤のMIDI OUT → インターフェイスのMIDI IN → USBでパソコン
- パソコンから外部音源を演奏:パソコン → USBでインターフェイス → MIDI OUTから音源のMIDI IN
- 外部音源の音声を取り込む:音源の音声出力 → オーディオインターフェイスの音声入力
接続後は、音楽制作ソフト側で使用するMIDIポートを選びます。USBで直接つないだ鍵盤なら鍵盤自身、MIDIインターフェイスを経由するならそのインターフェイスが選択対象です。外部音源を鳴らすときは、送信側と受信側のMIDIチャンネルも合わせます。
MIDIチャンネルは、演奏情報を送る側と受ける側が対応させる通信上の指定です。
外部シンセの内蔵音色を録るなら音声の接続も用意する

外部シンセの内蔵音色を録音したい場合は、シンセから出る音声をパソコンへ取り込む経路が必要です。アナログ接続なら、シンセの音声出力をオーディオインターフェイスのライン入力へつなぎます。MIDIも使う構成では、演奏情報を送る経路と、鳴った音を戻す経路の両方を用意することになります。
US-2x2HRを例にすると、電子楽器の音声は前面のIN1/IN2へ接続し、入力切り替えを「MIC/LINE」に設定します。メーカーの説明書では、オーディオ機器の接続時はGAIN、LINE OUT、PHONESの各つまみを下げるよう案内しています。

ここはUS-2x2HRの操作例なので、別の機種では端子名や入力切り替えの方法をその説明書に合わせてください。
楽器自体がUSBオーディオに対応していれば、USBで直接オーディオ録音する方法もあります。ただし「USBでMIDIを送れる」と「USBで内蔵音色を録れる」は別の対応項目です。ヤマハの接続ガイドもUSBで直接録音できるモデルを限定しているため、手持ちの楽器のUSBオーディオ仕様を基準に判断します。
演奏をあとから直したいなら、MIDIで記録・編集してから外部音源を鳴らし、その音をオーディオ録音する流れが使えます。内蔵音色を残したいのにMIDIデータだけを保存して終わらないことが大切です。MIDIは演奏を再現するための情報、オーディオは音源が鳴らした結果として扱いましょう。
MIDIを追加するか、音声入出力と一台にまとめるかで選ぶ
具体的な候補は、用途の異なる2製品で比べてみます。MIDI接続を追加するためのRoland UM-ONE mk2と、音声入出力も備えるTASCAM US-2x2HRです。同じ「MIDIをパソコンにつなぐ」目的でも、追加される機能が違います。
| 製品 | MIDIの接続 | 音声の入出力 | 向いている目的 |
|---|---|---|---|
| Roland UM-ONE mk2 | ケーブル一体型の1IN/1OUT | MIDI接続用。音声録音は別の経路で行う | USB端子のないMIDI鍵盤や音源をパソコンへ追加 |
| TASCAM US-2x2HR | DIN 5ピンのMIDI IN/OUT | マイク/ライン入力2系統、ライン出力1–2、ヘッドホン出力 | MIDI接続とマイク・楽器の音声入出力を一台で用意 |
UM-ONE mk2は、今のオーディオインターフェイスを使い続けながらMIDI接続を追加したい場合の候補です。USBケーブルとMIDIケーブルが一体になっており、MIDI信号の送受信を確認できるLEDも備えます。
ケーブルには「CONNECT TO MIDI OUT」「CONNECT TO MIDI IN」と接続相手を示す表記があるので、本体側のIN・OUTという名前だけで迷ったときは、この表示を手がかりにできます。
US-2x2HRは、音声入力も必要な場合の候補です。マイク/ライン入力2系統はコンボジャックで、同じ入力を用途に応じて使います。「マイク入力が2つ、さらに別枠でライン入力が2つ」と数えないようにしましょう。
MIDI端子の有無に加え、同時に取り込みたい音声がこの2入力で足りるかを考えるのが選択のポイントです。
購入時には使用OSとドライバーの対応も合わせます。UM-ONE mk2の公式ページにはOS別のドライバー案内があり、US-2x2HRの説明書はパソコン接続前の専用ソフトウェアのインストールを案内しています。端子が合うことと、使うパソコン環境で動作することは別の確認項目です。
音が出ないときはMIDI入力・音源・音声出力を順に見る


鍵盤を弾いても無音なら、すぐにMIDI端子付きの機材を買い足す前に、情報と音の流れを追ってみましょう。MIDI機器として認識されていても、鳴らす音源が用意されていなければ音は出ません。Roland A-49も音源を内蔵しておらず、別途ハードウェア音源またはソフトウェア音源が必要な製品です。
- MIDI入力先を見る。 USBで直接つないだ鍵盤や、使用中のMIDIインターフェイスが、音楽制作ソフトの入力として選ばれているか確認します。
- 鳴らす音源を見る。 ソフトウェア音源を使うなら、その音源がMIDIを受ける設定にします。外部音源なら送信先とMIDIチャンネルを確認します。
- 音声の経路を見る。 外部音源の音は、MIDIとは別に音声出力を接続して聴きます。パソコン内の音源なら、音楽制作ソフトのオーディオ出力設定を確認します。
US-2x2HRでパソコンの再生音が聞こえない場合、説明書はMONITOR BALANCEつまみがINPUT側いっぱいになっていないかも確認項目に挙げています。その状態なら、中央より右側へ回す案内です。
また、音声の出力先を本機に設定すると、パソコン本体のスピーカーやヘッドホン端子からは音が出なくなるため、どこにつないだヘッドホンで聴いているかも見直します。
DAWは、録音・編集・ミキシングなどを行う音楽制作ソフトです。US-2x2HRの説明書では、DAWの設定はOSの音声設定とは別に確認するよう案内しています。パソコン側で機器を選べたことだけで完了とせず、使っているソフトの入力と出力まで確かめると、接続のどこで止まっているかを絞れます。
オーディオインターフェイスとMIDIのまとめ
この記事のまとめです。
- MIDIは音声そのものではなく、音の高さや長さなどの演奏情報を扱う
- MIDI端子付きの機種でも、MIDI入力と音声入力は別の役割
- 対応するUSB MIDI鍵盤をパソコンへ直接つなぐ経路には、5ピンMIDI端子は不要
- USB端子があっても、USBオーディオに対応するかは機種ごとの確認が必要
- 5ピンMIDIは送信側のOUTから受信側のINへ接続する
- 外部シンセの内蔵音色を録音するには、音声を取り込む経路も用意する
- 既存の音声環境にMIDIを追加するなら、UM-ONE mk2のような別体型が候補
- 音声入出力も用意するなら、MIDI端子を備えるUS-2x2HRが候補
- 購入前は必要な音声入力数に加え、OSとドライバーの対応を確認する
- 無音時はMIDI入力、鳴らす音源、音声出力の順に接続と設定を確認する











