レコーディング用ヘッドホンの選び方|密閉型・有線と2機種を比較

レコーディング用ヘッドホンの選び方|密閉型・有線と2機種を比較

自宅で歌や楽器をマイク録音するなら、レコーディング用ヘッドホンは密閉型・有線接続を軸に選ぶのがおすすめです。密閉型は伴奏などの音がマイクへ漏れるのを抑えるため。有線接続を選ぶのは、演奏と同時に聴くモニター音で、Bluetoothによる遅延を避けるためです。

具体的な候補では、軽さを重視するならソニーのMDR-CD900ST、着脱ケーブルや折りたたみ機構を重視するならオーディオテクニカのATH-M50xが比較対象になります。私なら、まず録音する作業と接続先を決め、そのあとに装着感を確かめます。

この記事では、選ぶ理由から2機種の違い、録音時のモニター設定まで順に見ていきます。

この記事のポイント
  • マイク録音で密閉型を選ぶ理由
  • 有線接続と録音中の遅延対策
  • 端子・ケーブル・装着感の選択基準
  • MDR-CD900STとATH-M50xの違い
目次

レコーディング用ヘッドホンの選び方と用途の違い

モニターヘッドホンは何を確認するために使う?

モニターヘッドホンは何を確認するために使う?

モニターヘッドホンは、音楽などの制作中に音を確認するためのヘッドホンです。ソニーは一般のヘッドホンを完成した音楽を楽しむためのものとしたうえで、モニター用には、音源を正確に録音できているか、加えた効果が反映されているかを確かめる役割があると説明しています。

選ぶときの出発点は、音楽を気持ちよく聴けるかに加えて、作業に必要な違いを聴き取れるかです。

録音する側と、録音される音を確認する側でも役割は分かれます。例えばMDR-CD900STは、アーティストが演奏中の自分の音を確かめる用途と、エンジニアがマイクを通した音を確認する用途の両方に使われている機種です。

自宅で一人で録る場合も、「歌いながら聴く」「録った音を聴き返す」という作業を思い浮かべると、必要な使い方が具体的になります。

同じモニター用でも、制作のどの工程で使うかによって求められる音質や仕様は変わります。そのため、モニターという名前だけで一律に選ばず、メーカーが録音、ミキシングなど、どの用途を想定しているかまで見るのが大切です。録音を中心にするのか、録音後の作業も1台で進めたいのかを、最初に決めておきましょう。

マイク録音は密閉型、静かな場所でのミックスは開放型も候補

歌や楽器をマイクで録るなら、まず密閉型を候補にしてください。Sennheiserは、密閉型を録音やマイクを使用する作業向けとし、クリックトラックや演奏者用のモニター音がマイクへ入り込むのを抑える用途を挙げています。

録りたい歌や楽器と一緒に、ヘッドホンで聴いている音まで収録されることを避けたい場面です。

開放型は、静かな部屋でミキシングやマスタリングをする場合の選択肢です。Sennheiserは、開放的で自然な音を特徴として挙げる一方、音漏れがあり、遮音性も十分ではないと説明しています。録音中にマイクの近くで使う場合と、録音を終えて音を調整する場合では、優先する条件が変わるわけです。

ただし、録音とミックスをするために、最初から2台そろえる必要があるとは限りません。ATH-M50xのように、メーカーが録音とミキシングの両方を用途に挙げる密閉型もあります。1台で始めたいなら、マイク録音に必要な条件を満たしたうえで、録音後の用途も想定された機種から選ぶ方法があります。

密閉型か開放型かと、対応する制作工程は分けて考えましょう。

録音中のモニターには有線を基準にする

録音中のモニターには有線を基準にする

演奏しながら自分の音を聴く用途では、まず有線接続を候補にしましょう。歌ったり音を鳴らしたりしてから、ヘッドホンで聴こえるまでの遅れは、入力モニタリングレイテンシと呼ばれます。

AppleはLogic Proの公式サポートで、Bluetooth対応ヘッドホンを出力先にした場合も遅延が生じるとし、Bluetooth機器はミキシングやリスニングのみに使うよう案内しています。

この案内はLogic Proについてのものです。「ワイヤレス製品はすべて録音に使えない」と広げるのではなく、Bluetooth接続を、歌いながら自分の声を聴く用途の第一候補にしない、と捉えてください。

普段の音楽鑑賞と録音中のモニターでは、同じヘッドホンを使いたくても、接続方法に求める条件が異なります。

また、有線ヘッドホンへ替えるだけで、録音システム全体の遅延がなくなるわけではありません。Logic Proでは、入出力バッファ、信号の変換処理、オーディオインターフェイスのソフトウェア、プラグインなども遅延に関係します。

有線にしたあとも歌声が遅れて聴こえる場合は、ヘッドホンの買い直しより先に、音を返す経路と制作ソフトの設定を見ていきます。

端子・ケーブル・装着感を接続先に合わせる

購入前には、ヘッドホンを差す機器の端子を見ておきましょう。MDR-CD900STはステレオ標準プラグ、ATH-M50xは3.5mmステレオミニプラグを使い、6.3mmの変換アダプターを組み合わせられる構成です。同じ有線ヘッドホンでも、接続先にそのまま差せるか、変換が必要かは異なります。

本体価格とあわせて、必要な付属品まで確認したいところです。

端子は、太さに加えて形式も関係します。例えばFocusriteのScarlett 2i2第3世代では、ヘッドホン出力は1/4インチTRS端子です。説明書は、3.5mm TRSプラグには変換アダプターを使うこと、4極TRRSプラグのヘッドホンは正しく動作しない場合があることを示しています。

この条件は同機種の例ですが、手持ちのヘッドセットを流用するときにも、接続先の説明書を読む理由になります。

装着感では、重さだけでなく、イヤーパッドが耳の周囲にどう当たるかを確かめます。Rock oNは、ハウジングの角度やパッドの収まりが悪く隙間ができると、音漏れや聴こえ方の変化につながる場合があると説明しています。一方、締め付けが強すぎると長時間の作業が難しくなることも。

試着では、耳の収まりと締め付けの両方を見てください。

ケーブルは、接続機器から録音する位置までの配置に合わせて考えます。MDR-CD900STのコードは2.5m。ATH-M50xには着脱式コードが用意されています。

机で聴き返す位置と、マイクに向かう位置を思い浮かべて選びましょう。

折りたたんで収納したいか、ケーブルを使い分けたいかも、家庭での扱いやすさに関わる比較点です。

レコーディング用ヘッドホン2機種の比較と録音時の設定

MDR-CD900STは軽さと録音モニター用途を重視する人へ

ソニーのMDR-CD900STは、密閉ダイナミック型のモニターヘッドホンです。ソニーとソニー・ミュージックスタジオが共同開発した機種で、メーカーは録音中の演奏確認や、マイクを通した音の確認に使われる製品として説明しています。レコーディングでの用途が明確な候補を探している人に向いています。

音について、メーカーが挙げているのは、音の輪郭、定位、エコーの広がりなど、細かな違いの再現です。「定番だから」という理由だけで決めるより、こうした確認を自分の作業で重視するかを考えたいところ。歌や楽器を録ったときの音、加えた効果の違いを確かめる、というモニター用の役割に結び付けて検討できます。

質量はコードを含まず約200gで、コード長は2.5m、端子はステレオ標準プラグです。軽さは比較しやすい特徴ですが、小さなミニ端子への接続を想定しているなら、そのまま使える構成ではない点を考慮しましょう。もう一つの購入条件は修理です。

業務使用を目的とした製品のため、ソニーは無償修理期間を設けず、修理はすべて有償と案内しています。

ATH-M50xは着脱ケーブルと録音後の作業も重視する人へ

ATH-M50xは着脱ケーブルと録音後の作業も重視する人へ

オーディオテクニカのATH-M50xは、密閉型のモニターヘッドホンです。メーカーの米国公式ページでは、録音、ミキシング、DJモニター、個人でのリスニングを用途に挙げています。録音を始めたいけれど、その後のミキシングにも同じ1台を使いたい。そんな選び方をする場合に検討できるモデルです。

扱い方で目を向けたいのは、着脱ケーブルと折りたたみ機構。日本語のメーカー説明書でも、ATH-M50xの対応表に着脱ストレートコード、着脱カールコード、折りたたみ機構が示されています。接続位置に応じてコードを使い分けたい人や、作業を終えたら収納したい人には、この構成が選ぶ理由になります。

メーカー説明書の質量はコードを除いて約285g、インピーダンスは38Ωです。米国公式仕様表でも285g、38Ωと記載されています。ただし、インピーダンスの値だけを根拠に、手持ちの機器で十分な音量が得られるとは判断しないでください。

接続端子は3.5mmステレオミニプラグで、6.3mm変換アダプターを使う構成です。

購入時に注意したいのは、付属ケーブルが説明書によって2種類または3種類と異なることです。日本語の複数機種共通説明書はATH-M50xに3種類を示す一方、別のメーカー説明書は2種類を掲載しています。3本付属とは一律に扱わず、購入する国内商品のコードの種類・長さ・本数を販売店で確かめましょう。

米国向け商品の同梱内容も、そのまま国内品の保証にはできません。

2機種は重量・端子・ケーブルで絞り込む

比較する項目ソニー MDR-CD900STオーディオテクニカ ATH-M50x
形式密閉ダイナミック型密閉ダイナミック型
質量約200g、コード含まず約285g、コード含まず
接続プラグステレオ標準プラグ3.5mmステレオミニプラグ、6.3mm変換アダプターを使用可能
コード長さ2.5m着脱式。付属の種類・本数は購入品の確認が必要
用途を考える手がかり演奏者とエンジニアの録音モニターメーカー米国ページが録音とミキシングを用途に掲載

軽さを優先し、標準プラグを使う録音環境に合わせるならMDR-CD900STから検討できます。コードの使い分けや収納方法も重視するならATH-M50xが候補です。ただし、重量表だけで装着感までは決まりません。

候補を絞ったあとに試着できるなら、パッドの収まりや締め付けを確かめ、頭と耳に合うかを判断しましょう。

再生周波数帯域の広さだけで優劣を決めるのも避けたいところです。Shureは、最低・最高周波数の2つの数字だけでは、その間でどのような音を再生するかは説明できないとしています。数値の大きさを追うより、録音中に必要な音の違いを確認するという目的に戻り、用途と装着感、接続条件を合わせて選んでください。

録音前の確認と、音が遅れる・二重に聞こえるときの設定

録音前の確認と、音が遅れる・二重に聞こえるときの設定

接続するときは、使う製品の説明書に従って音量を最小にしてからつなぎます。ATH-M50xの日本語説明書もこの手順を示し、耳を刺激しすぎない適度な音量で使うよう注意しています。装着後は、パッドの収まりや隙間も確認。密閉型という形式と、実際に頭へどうフィットしているかを、両方見ておきましょう。

有線接続でも自分の声が遅れるなら、オーディオインターフェイスのダイレクトモニタリングが選択肢になります。例えばScarlett 2i2第3世代は、入力音を本体のヘッドホン出力へ直接送り、パソコンで再生する音と一緒に聴ける機能を備えています。

メーカーは、この経路ならコンピューターを通るレイテンシの影響を受けずに演奏をモニターできると説明しています。

同機種でダイレクトモニタリングを使う場合は、録音中の入力音をDAWからも出力する設定にしないことが必要です。両方の経路で返すと、片方が遅れて、声が二重に聴こえる場合があります。

逆に、DAWのプラグイン効果を聴きながら演奏したい場合は、DIRECT MONITORをオフにしてDAW経由で聴く方法が有効なことも。ただし、その場合はバッファサイズやパソコンの処理能力に応じた遅延が生じ得ます。

DAW経由で聴く場合の調整例として、Logic ProではI/Oバッファサイズを小さくすると入力モニタリングの遅延が減ります。一方でプロセッサへの負荷は増え、システムオーバーロードの警告が出る場合があります。Appleの案内は、録音時は最も低い設定を使い、警告が出たら次の設定値へ上げるというもの。

小さければ無条件によいのではなく、動作との兼ね合いがあります。

Logic Proでは、プラグインによる遅延を抑える低レイテンシモードも用意されています。

録音中の違和感が残ったら、Bluetooth接続の有無、ダイレクトモニターとDAWの二重出力、バッファやプラグインを切り分けて考えてください。

ヘッドホン選びとモニター経路の設定をそろえることが、自宅でレコーディングを始めるための準備になります。

レコーディング用ヘッドホン選びのまとめ

この記事のまとめです。

  • モニターヘッドホンは、録音できた音や加えた効果を制作中に確認するための道具です。
  • 歌や楽器をマイク録音するなら、モニター音の漏れを抑える密閉型を軸に選びましょう。
  • 開放型は静かな部屋でのミキシングなどが候補用途。録音とミックスを想定した密閉型なら、1台で始める選択肢もあります。
  • 録音中のモニターは有線を基準に。AppleはLogic ProでのBluetooth機器の使用をミキシングやリスニングに限るよう案内しています。
  • 接続前にプラグのサイズと形式を照合し、装着時はイヤーパッドの隙間と締め付けを確かめます。
  • MDR-CD900STはコードを含まず約200g。標準プラグを使い、修理はすべて有償という購入条件があります。
  • ATH-M50xは着脱ケーブルと折りたたみ機構が特徴。付属ケーブルの記載に差があるため、国内購入品の同梱内容を確認しましょう。
  • 再生周波数帯域の広さだけで音質の優劣を決めず、用途・接続・装着感を合わせて比較します。
  • 有線でも遅延は生じ得ます。対応するインターフェイスではダイレクトモニタリングを検討できますが、DAWとの二重出力に注意が必要です。
  • Logic Proではバッファを小さくすると遅延が減る一方、処理負荷が増加。プラグインの影響には低レイテンシモードも選択肢です。
参考にした情報
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この記事を書いた人

音の道具が好きで、買い物には少し慎重。マイクやイヤホン選びを、予算・接続・置き場所から一緒に考えます。家で聴く・録る時間を心地よくするヒントをお届けします。

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