マイクプリアンプは必要?役割・選び方と接続の違いを解説

マイクプリアンプは必要?役割・選び方と接続の違いを解説

マイク用のプリアンプは、マイクが出力する小さな音声信号を増幅する機材です。ただし、ほとんどのオーディオインターフェースには、その機能がすでに内蔵されています。外付けを検討するのは、必要なゲインが足りないときや、録音する音の質感を変えたいとき。まずは、この二つを分けて考えましょう。

「声が小さいから買う」と決める前に、録音の入力レベルと、伴奏に対して聞こえる声の大きさも切り分けたいところです。ここでは家庭での録音・配信を想定し、追加する必要性から、種類ごとの接続、購入前の適合条件まで順に見ていきます。

この記事のポイント
  • マイク信号を増幅するプリアンプの役割
  • ゲイン不足と音色づくりによる必要性の違い
  • 単体型とインライン型の接続条件
  • 対応マイク・48V電源・入力レベルの確認
目次

マイクプリアンプの役割と外付けが必要になる条件

マイクの小さな信号を、録音で扱えるレベルに増幅する

マイクの小さな信号を、録音で扱えるレベルに増幅する

マイクから出る信号は微弱で、そのまま他の音源と混ぜたり録音したりするためには増幅が必要です。その役割を担うのがマイクプリアンプ。マイクからの信号を「マイクレベル」、それを増幅して機器間で扱う、より高い信号レベルを「ラインレベル」と呼びます。

ここでよく出てくる「ゲイン」は、入力信号をどれだけ増幅するかに関わる調整です。たとえばFocusriteのScarlett 2i2 4th Genでは、プリアンプの入力ゲインで、コンピューターや録音ソフトへ送る信号レベルを調整します。

ヘッドホンの音量を調整するノブは別にあり、聞く音量と録音へ送るレベルは同じ操作ではありません。

「プリアンプを持っていないのに、マイクをつなげて録音できている」という場合も、不思議ではありません。マイク入力を備えたインターフェースやミキサーの内部で、プリアンプ回路が働いているためです。外付けの箱を買うことと、プリアンプの機能を使うことは分けて考えると、機材の役割が見えてきます。

内蔵プリアンプで足りていれば、外付けを急ぐ必要はない

外付けを買うかどうかの出発点は、今の機材で何が不足しているかです。内蔵プリアンプで必要な入力レベルを得られ、ノイズや音色にも困っていないなら、追加購入を急ぐ理由はありません。

Universal Audioの解説でも、廉価なインターフェースにしっかりしたプリアンプが内蔵されている場合があると説明しています。

今の状態・目的最初に考えること
入力レベルも音色も満足している内蔵プリアンプを使い続ける
マイクに必要なゲインを確保できないゲインを補う機材を検討する
録音に別の音色や質感を加えたい音色の特徴でプリアンプを比較する
伴奏を流すと声だけ小さく感じる入力レベルに加え、伴奏との音量バランスを見直す

とくに、完成済みの伴奏に声を重ねる録音では、声の入力が弱いのではなく、伴奏側が大きい場合があります。Akai Professionalは、録音中の声に合わせて伴奏トラックを下げる考え方を案内しています。伴奏と張り合うために入力ゲインを上げると、声の大きな部分で歪むおそれがあるためです。

買い足す前に、まず録音ソフトの入力メーターを見る価値があります。

必要なゲインはマイクと録る音で変わる

必要なゲインはマイクと録る音で変わる

ゲイン不足を考えるときは、マイクの型番と、実際に録る声・楽器の大きさをセットで見ます。Akai Professionalの解説でも、マイクの出力レベルと音源の音量を考慮するよう案内しています。同じ機材でも、どんな音をどう収音するかを抜きに、ゲインノブの位置だけで良否を決めることはできません。

具体例がShureのSM7Bです。Shureはこのモデルについて、約60dB以上のクリーンなゲインが必要と説明し、十分なゲインを持つインターフェースやインラインプリアンプを挙げています。これはSM7Bについての目安であり、ダイナミックマイク全体に共通する必要量ではありません。

手持ちのマイクの説明と、接続先のマイク入力のゲイン仕様を照らし合わせましょう。

仕様を確認したら、本番で読む文章や歌うフレーズで短く試し録りします。「音が入るか」だけの小さな声では、本番の強弱をつかめないからです。マイクの位置や音源との距離も含めて試し、入力レベルとノイズを確認。それでも必要なレベルを得られないときに、ゲイン補助を検討する順序が実用的です。

ゲインを補う目的と、音色を作る目的を分ける

プリアンプ選びには、信号をなるべく色付けせずに増幅したい場合と、録音する音に特徴を加えたい場合があります。Universal Audioの解説は、透明な収音を目指すプリアンプと、音にさまざまなカラーを加えるプリアンプを紹介しています。単にゲインの数字が大きいかどうかだけでは、この違いは選べません。

声の小ささを補いたいなら、まず必要な増幅量と対応マイクを優先します。一方、今の録音レベルは足りていて、もっと暖かい質感などを求めるなら、マイクとプリアンプの組み合わせによる音色が比較の中心です。同解説も、組み合わせを変えて試すことを勧めています。

「外付けなら、どれでも好みの音になる」とまでは考えないほうがよいでしょう。

私なら、購入前に「今の音で残したい部分」と「変えたい部分」を一つずつ言葉にします。声の質感は好きでレベルだけ足りないのか、十分録れているけれど音色を変えたいのか。その違いがはっきりすると、ゲイン補助の製品と音作りのための製品を、同じ基準で比べずに済みます。

マイクプリアンプの選び方と接続・ゲイン調整

単体型とインライン型では接続先が違う

ライン出力を持つ単体プリアンプを使う場合は、マイクをそのマイク入力へつなぎ、増幅後のライン出力をインターフェースのライン入力へ送る構成が基本です。一方、インライン型のDM1 DYNAMITEは、パッシブマイクの信号をブーストし、後段のマイクプリアンプへ渡す製品。

同じ「外付けプリアンプ」でも、後段で使う入力を一律には決められません。

構成音声信号を送る順序接続で見る点
ライン出力を持つ単体型マイク → 単体プリアンプ → インターフェースのライン入力出力・入力の信号レベルと端子
DM1 DYNAMITEによる補助対応するパッシブマイク → DM1 → 後段のマイクプリアンプ対応マイクと後段からの48V供給

接続先の具体例として、Scarlett 2i2 4th Genの説明書では、外部マイクプリアンプを前面の6.35mm入力につなぐラインレベル機器として挙げています。この用途ではInstを無効にし、白色表示のライン設定を使います。

背面のXLRはマイク入力です。端子が挿さるかだけでなく、どの入力モードで使うかまで確認する必要があります。

同じモデルでは、前面入力にケーブルを挿すと、対応する背面XLR入力が無効になります。外付け機材を試した後でマイクの音が出なくなった場合は、このような入力の優先関係も確認箇所です。

ここで挙げた端子配置と動作は第4世代の2i2のものなので、別モデルへそのまま当てはめず、手元の説明書の入力欄を見てください。

48Vは増幅量ではなく、接続機器を動かす電源

48Vは増幅量ではなく、接続機器を動かす電源

48Vファンタム電源は、電源が必要な接続機器へ、インターフェースのXLR端子から電圧を供給する仕組みです。主な用途はコンデンサーマイクですが、48Vを必要とするインラインプリアンプなどにも使われます。ゲインのdBと電源のVは、製品選びで見る意味が異なります。

注意したいのは、プリアンプ自身が48Vで動くことと、その先のマイクに48Vが必要なことは別という点です。DM1は48Vファンタム電源を必要としますが、対象はパッシブのダイナミック/リボンマイク。ファンタム電源を必要とするコンデンサーマイクやアクティブリボンには使えないと明記されています。

「48V対応」という一言だけで、組み合わせを決めないようにしましょう。

供給先の範囲も機種ごとの確認が必要です。Scarlett 2i2 4th Genでは48Vを有効にすると両方のXLR入力へ供給され、6.35mm入力には供給されません。説明書は、一部の旧型マイクではファンタム電源が悪影響を及ぼす可能性を示し、マイクの取扱説明書で適合を確認するよう案内しています。

また、この機種で48Vを有効にする際は、不要なポップノイズなどを避けるため入力ゲインを下げる手順です。

ゲインは本番の声と入力メーターで合わせる

入力ゲインは、高ければよいわけではありません。Scarlett 2i2 4th Genの説明書では、低すぎるゲインで録った信号を後から持ち上げるとノイズが大きく聞こえる場合があり、高すぎるとクリップして耳障りな歪みが録音される可能性があると説明しています。

目標は、大きな声の部分も歪ませずに収めることです。

確認には、入力のピークレベルを使います。ピークは、監視を始めてからの最大レベル。同機種の説明書では、録音時のピークを−12dBFSにするよう案内しています。また、0dBFSはクリッピングの状態として、入力ゲインを下げるよう示されています。

この−12dBFSは同説明書の目安であり、あらゆる機材のノブを同じ位置に合わせる指示ではありません。

実際の調整では、本番と同じ声量で試し、強い部分のピークと録音した音を確認します。外付けを導入した後も、後段の入力が過大になっていないかを見ることが大切です。ゲインを足すことが目的でも、最終的に入力を歪ませてしまっては困ります。

伴奏に声が埋もれる問題は、この入力調整とは分けて、録音中のトラックの音量バランスで扱いましょう。

ゲイン補助の候補は、対応マイクと電源から絞る

ゲイン補助の候補は、対応マイクと電源から絞る

手持ちのパッシブマイクのゲインを補いたい場合、具体的な候補の一つがsE Electronicsの「DM1 DYNAMITE」です。国内取扱元の製品ページでは、パッシブのダイナミック/リボンマイクに+28dBのゲインを加えるアクティブ・インライン・プリアンプと説明されています。

音色を積極的に変えるより、信号をクリーンに増幅する目的の製品です。

購入を考える条件は、使うマイクが対象に含まれること、そして接続先のプリアンプ・ミキサー・インターフェースがDM1用の48Vを供給できることです。コンデンサーマイクなど、ファンタム電源を必要とするマイク用としては選べません。

また、後段の機材が別途必要なので、DM1だけで録音環境が完結する製品として考えないことも大切です。

接続位置については、製品ページが最適な結果のためにマイク出力への直接接続を推奨しています。マイクとの間にケーブルを使うことも可能ですが、その区間は短いほど全体的な性能が向上すると説明されています。卓上で使うなら、マイクの出力部分へ取り付ける構成も含めて考えておきたいところです。

最後に、製品選びは「対応マイク」「必要なゲイン」「電源」「後段の入力」「求める音色」の順に照合すると筋道が通ります。ゲイン不足が解決したい問題なら、音色づくりのために大きな機材へ予算を広げる必要があるか、立ち止まって考えられます。

今の内蔵プリアンプで十分録れているなら、そのまま使う選択も含めて、自宅の構成に合うところへ予算を配分しましょう。

マイクプリアンプの必要性と選び方のまとめ

この記事のまとめです。

  • マイクプリアンプは、マイクの微弱な音声信号を増幅する機材
  • 内蔵プリアンプで入力レベルと音色に満足していれば、外付け購入を急ぐ必要はない
  • 伴奏に対して声が小さい場合は、入力ゲインだけでなくトラックの音量バランスも見直す
  • 必要なゲインはマイクと収音条件で確認し、SM7Bの約60dB以上という目安を全マイクへ広げない
  • ゲイン補助と音色づくりでは、プリアンプを比較する基準が異なる
  • ライン出力を持つ単体型はライン入力へ、DM1は後段のマイクプリアンプへ接続する構成
  • 48Vファンタム電源は接続機器を動かす電源で、ゲインの増幅量とは別の仕様
  • DM1 DYNAMITEはパッシブマイク用で、後段から48V供給が必要。電源を必要とするコンデンサーマイクなどには使用不可
  • 入力ゲインは本番と同じ声量で試し、ピークと歪みを確認して調整する
  • 購入前は対応マイク、ゲイン、電源、接続先、求める音色を照合する
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この記事を書いた人

音の道具が好きで、買い物には少し慎重。マイクやイヤホン選びを、予算・接続・置き場所から一緒に考えます。家で聴く・録る時間を心地よくするヒントをお届けします。

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