アコギのマイク録音を始めよう|必要機材・置き方・録音レベルの基本

アコギのマイク録音を始めよう|必要機材・置き方・録音レベルの基本

アコギをマイクで録音するなら、まずはマイク1本で、12フレット付近に向けて約20cm離す配置から試してみましょう。最初から2本そろえなくても録音は始められます。音の違いをつかむには、マイクを増やす前に、向ける場所と距離を変えて聴き比べるのがよい出発点です。

パソコンでの録音は、マイク、オーディオインターフェース、録音ソフトを組み合わせる方法が基本です。ここでは必要な道具と接続を整理したうえで、低音の膨らみ、部屋の響き、録音レベルを順番に調整していきます。弾き語りを録りたい方にも、本数を決める前に知っておきたい使い分けがあります。

この記事のポイント
  • マイク1本・12フレット付近からの録音
  • 端子と電源まで含めた機材選び
  • 位置・部屋・入力レベルの調整
  • ステレオ録音と弾き語りの使い分け
目次

アコギのマイク録音に必要な機材と選び方

マイク録りとライン録りは、欲しい音から選ぶ

マイク録りとライン録りは、欲しい音から選ぶ

アコギの録音方法には、マイクで収音する「マイク録り」と、エレアコなどをケーブルで接続する「ライン録り」があります。どちらが優れているかを一律に決めるより、楽曲で表現したい音から選びましょう。島村楽器の解説では、マイク録りのほうがアコギらしい生演奏感のある音になると紹介されています。

マイク録りは、向ける場所や距離によって音を作れるのが面白いところです。サウンドホールに近づければ低音が強くなり、離せば音量や音の印象が変わります。さらに、部屋の反響を多く含ませる録り方も可能です。ギター単体の音だけでなく、どれくらい空間の響きを残したいかも考えておきましょう。

一方、ライン録りを選ぶときは、接続先の入力設定が重要です。接続例としてFocusrite Scarlett 2i2 第4世代では、エレアコを6.35mmのTSモノラルケーブルで接続し、Instを有効にします。「ライン録り」という呼び方だけを見て、機器のライン入力設定を選ぶわけではありません。

マイクのXLR接続と、ギターの楽器入力への接続を分けて考えるのがポイントです。

パソコン録音の道具と接続をそろえる

外付けのXLRマイクを使ってパソコンに録音する場合は、次の道具を用意します。マイクだけに予算を使い切らず、ケーブル、スタンド、ヘッドホンまで含めて考えたいですね。録音ソフトはDAWとも呼ばれ、パソコンで音を録音するために使います。

  • パソコンと録音ソフト
  • オーディオインターフェース
  • マイクとマイクスタンド
  • マイクとインターフェースをつなぐXLRケーブル
  • 録音する音を聴くためのモニタリングヘッドホン

オーディオインターフェースは、マイクから届くアナログ信号をパソコン用のデジタル信号に変換し、入力レベルも調整する機器です。接続の流れは、マイク→XLRケーブル→インターフェース→パソコン。

Scarlett 2i2 第4世代の例では、マイクをXLR入力1または2に、パソコンをUSBケーブルで接続します。ヘッドホンはインターフェースのヘッドホン出力につなぎます。

マイクによってはファンタム電源が必要です。これは、インターフェースのXLR端子から接続機器に電力を供給する機能。Scarlett 2i2 第4世代では、電源を必要とするマイクを接続し、入力ゲインを下げてから48Vを有効にする手順です。

この機種では両方のXLR入力へ供給されるため、2本使う場合はもう一方のマイクも対応を確かめます。電源の要否を、マイクの見た目だけで決めないようにしましょう。

USB出力を備えたマイクなら、直接パソコンに接続できる製品もあります。すべてのマイクに別体のインターフェースが必要というわけではありません。ただし、将来マイクを増やす予定があるなら、同時に使える入力を含めて検討したいところです。

また、伴奏に合わせて弾く場合は、有線のヘッドホンが適しています。Bluetooth接続では、再生音が耳へ届くまでの遅れが演奏に影響することがあります。

コンデンサーを軸に考え、手持ちのマイクも活用する

コンデンサーを軸に考え、手持ちのマイクも活用する

これからアコギ用に選ぶなら、コンデンサーマイクを軸に検討できます。Shureは、クリアな音を再現する傾向があり、一般的にアコースティックギターに適すると説明しています。Focusriteも、よりクリアなアコギ録音に適した選択肢として紹介しています。

ただし、ダイナミックマイクで録音できないわけではありません。Focusriteの解説でも、ダイナミックマイクで一定の結果を得られるとされています。すでに持っているなら、まず位置を変えて試す方法があります。

小さなアコギの音をダイナミックマイクで録る場合や、マイクを離した場合は、より多くの入力ゲインが必要になることもあります。

アコギを狙いやすい形としては、細身のペンシル型も候補です。ヒビノは、コンパクトで音源を狙いやすいことをアコギ録音に適する理由として挙げています。具体的には、AKG P170 スティック型コンデンサーマイク (ペンシルマイク)。

立ち上がりの鋭い音を再現する楽器録音用として紹介され、アコギの録音にも適した製品です。

AKG P170の確認項目仕様
形式・指向特性コンデンサー型・カーディオイド
接続端子XLR(3P)
電源ファンタム DC48V、3mA以下
寸法・質量直径22×高さ161mm、122g
付属品マイクホルダー

P170を選ぶなら、48Vファンタム電源を供給できる接続機器とXLRケーブルを組み合わせます。付属品として記載されているのはマイクホルダーなので、スタンドやケーブルも予算に含めてください。

アコギ用の細身のマイクを探している方には検討しやすい候補ですが、マイクを替えるだけで部屋の騒音まで解決するとは考えず、置き方と録音環境も一緒に調整しましょう。P170の仕様はこちらで確認できます。

アコギのマイク録音を整える置き方と設定

マイク1本は12フレット付近から試す

最初の配置は、12フレット付近に向けて約20cm離す位置が目安です。これはShureのホームレコーディングガイドが、バランスのよいアコギの音を得るために紹介している配置。決まった正解の距離ではなく、ここから自分のギターと部屋に合わせて動かしていきます。

サウンドホールの真正面へ近づけると、低音が強くなりやすくなります。低音の量が欲しいときには試せる位置ですが、輪郭がぼんやりする場合は、ネックとボディが接する付近へ向きを変えてみましょう。Shureも、よりバランスのよい収音を狙う位置として、この接合部を挙げています。

試す位置音の傾向・使いどころ
12フレット付近へ約20cm離して向けるバランスのよい音を探す出発点。Shureの配置例
サウンドホール正面へ20cm離して向ける低音が強調される。ヒビノの配置例
サウンドホール正面へ8cm離して向ける低音が非常に強く、ぼんやりしやすい。一方で周囲の不要な音を抑えやすい。ヒビノの配置例
ブリッジへ10〜20cm離して向ける暖かく柔らかな音。ピックや弦の雑音を抑えられる反面、細部の情報は少なくなる。ヒビノの配置例

表の配置は、欲しい音に応じて試す候補です。たとえば、ピックや弦の雑音を抑えて柔らかく録りたい場合、ブリッジを狙う方法があります。ただし、細部の情報も減るという条件付き。雑音だけが消えて、ほかの音はそのまま残る調整ではありません。音の輪郭と柔らかさのどちらを重視するか、録音して判断しましょう。

ひとりで録音するなら、複数の位置でテスト録音してから本番の配置を選びます。演奏中に耳へ届く生音だけではなく、ヘッドホンでマイクが拾った音を聴くことが大切です。マイクが手や演奏の邪魔にならない配置も必要なので、音を聴くときに弾きやすさも合わせて確かめておきましょう。

低音の膨らみと部屋の反響を分けて見直す

録音がこもって聴こえたら、まずマイクの位置と部屋の反響を分けて考えます。サウンドホールへ近づけたときの低音の膨らみと、壁・天井・床で反射した音が重なることによる不明瞭さは、見直す箇所が異なります。低音が多すぎるなら向きや距離を、反響が目立つなら録る空間を見直す、という順序です。

部屋を選べる場合は、硬い面が多い場所より、カーテンやクッションなどの柔らかい素材が多く、反射の少ない空間が候補になります。Shureは浴室のような硬い表面の多い場所を、不要な反射が生じる例として挙げています。まず録音場所を比べ、それでも反響が気になる場合に、吸音材を含む環境の調整を検討しましょう。

反響とは別に、生活音もテスト録音で聴いておきたいところです。Focusriteは、コンデンサーマイクでは外の騒音、椅子の軋み、換気や機材の静かな音も拾うことがあると注意しています。ギターの音色がよくても、椅子の音が気になるなら、録音環境の課題が残っています。

ギターのチューニングと周囲の音を、本番前にまとめて確認しておきましょう。

部屋の響きは、常に取り除くべきものでもありません。開放的な音にしたい場合は、マイクを離して室内の反響を多く取り込む方法があります。ただし、不要な音も気になっている部屋では、離すことがそのまま改善になるとは限りません。残したい響きと、録りたくない背景音を聴き分けて距離を決めます。

録音レベルは最大音量で合わせ、モニター経路を選ぶ

録音レベルは最大音量で合わせ、モニター経路を選ぶ

録音レベルは、曲のいちばん大きな音を弾いた状態で調整します。静かな部分だけで合わせると、本番の大きな音で入力が過大になる可能性があります。入力が大きすぎて歪む現象がクリッピングです。まずテスト録音を行い、強く弾く部分でもメーターが赤い領域に入らないようにします。

数値の出発点が欲しい場合、Focusriteのゲイン設定ガイドでは、録音時のピークを約−12dBFSとする例が示されています。これは余裕を残すための目安です。デジタル録音で上限の0dBFSへできるだけ近づける必要はなく、思わず大きく弾いた音にも余裕を持たせる考え方です。

一方、入力を小さくしすぎればよいわけでもありません。Scarlett 2i2 第4世代の説明では、小さく録った信号を後から大きくすると、ノイズが目立つ場合があるとされています。狙うのは、十分な入力があり、大きな音でもクリップしない範囲。

ゲインノブを何時の位置にするかより、実際の演奏に対するメーターの動きを見ます。必要なゲインは、マイクの種類、音の大きさ、マイクまでの距離によって変わります。

ヘッドホンで自分の音を聴く際、演奏してから音が返るまでの遅れが気になることがあります。Scarlett 2i2 第4世代では、ダイレクトモニターを使うと、パソコンを経由する前の入力音を直接聴けます。録音ソフトのエフェクトがかかる前の音を確認したい場合にも使う機能です。

ただし、この機種でダイレクトモニターと録音ソフトから返る音を同時に聴くと、二重に聴こえたり、わずかな位相ずれが生じたりする場合があります。その場合は、録音ソフト側の録音トラックをミュートして直接音を聴くか、ダイレクトモニターをオフにしてソフト側の音だけを聴く方法を選びます。

録音レベルの設定と、どの経路で聴くかの設定は、別々に扱いましょう。

2本で録るなら、広がりと音の重なりを確認する

ギター1本の録音に慣れて、よりワイドで立体感のある音を求めるなら、2本によるステレオ録音が選択肢になります。Focusriteは、ブリッジ付近と12フレット付近へ1本ずつ置く配置を出発点として紹介しています。ただし、2本にすると位相の問題が生じる可能性もあります。

本数を増やすことと、必ず音がよくなることは同じではありません。

別の配置が、同じマイク2本のヘッドをできるだけ同じ場所に置き、角度をつけるXY方式です。Shureの説明では、上下に重ね、水平位置を近づけることで、音が2本へ同時に届くようにします。マイクを離して置く方法ほど広大な空間性は得られない一方、音源の位置を正確に捉えやすい配置です。

広さを最優先にするか、位置の明確さを重視するかで、選ぶ配置が変わります。

2本を導入するときは、配置に加えて聴く設定も見直します。Scarlett 2i2 第4世代のステレオ・ダイレクトモニターでは、入力1が左、入力2が右へ出力されます。一方、モノラル設定では両方が中央へ出ます。

ステレオの広がりを聴きたい場面と、2系統の音を中央で聴きたい場面では、同じ設定を使うとは限りません。

マイク1本のまま別の広がりを作る方法もあります。Line 6は、同じギターパートを別々のトラックへ2回演奏して録り、一方を左、もう一方を右へ振る方法を紹介しています。これは1回の演奏を2本のマイクで録る方法とは異なります。

「一度の演奏を立体的に録りたい」のか、「別の演奏を重ねたい」のかを先に決めましょう。

弾き語りは一発録りと別録りを使い分ける

弾き語りは一発録りと別録りを使い分ける

弾き語りでは、歌とギターを同時に録る一発録りと、ギターを録ってから歌を録る別録りを選べます。弾き語りすとLABOは、一発録りはライブ感を残しやすく、別録りは音の調整や録り直しがしやすいと整理しています。演奏全体の勢いを残したいのか、歌とギターを個別に仕上げたいのかが選ぶ基準です。

録り方マイクの使い方判断したい点
別録りギターを録った後、同じ1本で歌を録る方法がある個別に調整・録り直しをしやすい。歌とギターが合うよう、リズムに気を配る
1本で一発録り歌とギターをまとめて収音する声量に合わせて位置を探す。近づけすぎると片方へ偏りやすい
2本で一発録り歌用とギター用に1本ずつ置く各マイクの向きと、もう一方の音の入り方を調整する

1本で同時に録る配置について、同記事では、声量に応じてボーカル寄りに置き、少し離して全体を収音する方法を紹介しています。ギターだけを録るときの12フレット狙いを、そのまま弾き語り全体へ当てはめる必要はありません。歌が小さすぎないか、ギターが前へ出すぎないかを、歌いながらテスト録音して判断します。

2本で一発録りする場合、弾き語りすとLABOでは、ギター側はやや上から下へ、歌側は下から上へ向ける配置を工夫の一例として挙げています。ただし、歌側のマイクの位置は、目線や歌いやすさにも関わります。角度だけを優先せず、演奏できる配置の範囲で、各マイクに入る歌とギターのバランスを探しましょう。

別録りなら、マイク1本を使い回す方法があります。そのかわり、後から歌を合わせることを考えてギターを録る必要があります。機材の本数を増やす前に、一発録りの演奏感を大事にしたいのか、別録りで個別に仕上げたいのかを決めてみてください。最初の1本でも、録り方によってできることは変わります。

アコギのマイク録音のまとめ

この記事のまとめです。

  • アコギのマイク録音は1本から始められ、12フレット付近へ約20cm離して向ける配置が出発点になる
  • マイク録りとライン録りは欲しい音から選び、エレアコの直接接続では機器に合った楽器入力設定を使う
  • XLRマイクのパソコン録音には、インターフェース、録音ソフト、ケーブル、スタンド、ヘッドホンも用意する
  • コンデンサーマイクを軸に検討できるが、手持ちのダイナミックマイクでも録音を試せる
  • AKG P170はアコギ録音の候補となるペンシル型で、XLR接続とDC48Vファンタム電源が必要
  • サウンドホールへ近づけると低音が強くなりやすく、向きと距離を変えてテスト録音する
  • 低音の膨らみ、部屋の反響、生活音を分けて聴き、録音場所とマイク位置を見直す
  • 録音レベルは最大音量で調整し、Focusriteが示すピーク約−12dBFSの例を参考に余裕を残す
  • Scarlett 2i2 第4世代で音が二重に聴こえる場合は、ダイレクトモニターとソフト側の返しを見直す
  • 2本のステレオ録音は広がりを得られる一方、位相の問題にも注意が必要。同じパートを2回録る方法とは区別する
  • 弾き語りは演奏感を残す一発録りと個別に調整する別録りを使い分け、別録りなら1本を使い回せる
参考にした情報
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この記事を書いた人

音の道具が好きで、買い物には少し慎重。マイクやイヤホン選びを、予算・接続・置き場所から一緒に考えます。家で聴く・録る時間を心地よくするヒントをお届けします。

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